「思い出」を金庫にしまうって素敵じゃない?

私の叔母は若い頃に1度結婚に失敗し、母の実家に出戻ったまま、ずっと実家暮らしの不思議ちゃんだ。もう40歳近いのに少女趣味で気分屋で、母は怒るのを通り越してもう呆れているし、姪である私の目から見てもしょーもない大人だと思う。失敗したといっても1度は結婚しているのだから、昔はもうちょっとまともなのかと思ったりもしたけど、母に言わせると単に、ちょっとだけ叔母の見た目が良かっただけ。相手の男性も相当なバカで、見かけだけで叔母との結婚を決め、結婚して少し時間をかけてみて、やっとダメだとわかったのだろうと。

母の実家に遊びに行くと叔母とも会うのだけど、先日は実家にちょっと不釣り合いな程、大きな金庫を購入していた。叔母の部屋には離婚した時に持ち帰った金庫もあるのに、なぜこのリビングに金庫を置いているのかと言えば、恐らく大きくて自室では持て余したからだろう。後先考えずに購入するのは叔母の得意技だ。そして母が叔母に金庫を購入した理由を聞いても、「思い出」を金庫にしまうって素敵じゃない?などと、窓際で涼風に吹かれているかのような涼しい顔をしてみせるのだ。こちらはドン引きで、叔母の寒さ、痛さに目も開けられない。

この金庫に限らず、叔母は自室の、離婚時に持ち帰った金庫も、どうやら開け方を忘れてしまっているらしい。鍵はあるのだが、ダイヤルの回し方が書かれた紙をどこかに紛失してしまったらしい。そして叔母は、そもそもこの金庫の中に、何が入っているのかも思い出せないらしい。

何かいい物が入っているかもしれないと思えば、金庫や鍵専門の業者を呼んで、金庫を開ける努力をしてみると思う。でも叔母のことだから、金庫の中には何も入っておらず、最悪、叔母のくだらない思い出だけが詰まっている可能性もある。それなのにまた金庫を購入する叔母。この人と血が繋がっているなんて、少しも思いたくない感じだ。